なぜミックスボイスは詰まるのか?──閉鎖トレーニングの落とし穴と後輪状披裂筋

ミックスボイスを習得しようとして、

・声帯閉鎖を鍛える
・声帯をしっかり伸ばす
・腹圧を高める
・軟口蓋を上げる
・咽頭を広げる

こういったトレーニングを中心に行っている方は非常に多いと思います。

確かにこれらは重要です。

しかし――

それだけに着目すると、ミックスは破綻します。


■ 多くのボイトレが“締める側”に偏っている

現在主流になっているトレーニングの多くは、

  • 閉鎖筋を強める
  • 声帯を伸ばす(CT)
  • 腹圧を上げる
  • 鼻腔に固定し響きを集める。
  • 体幹を固める

といった「体と声帯を締める方向」『声の響きを閉じる方向』に働くものが中心です。

その結果、体全体が

閉じる・固める・圧をかける

方向へ偏っていきます。

すると何が起きるか。


■ 高音で声帯が過度に閉まる

音域が上がるにつれて、

・閉鎖が強まり
・伸展が強まり
・圧が高まり

声帯はどんどん“締まる側”へ進みます。

その結果、

✔ ブリッジでロックする
✔ 高音で喉が詰まる
✔ 声が跳ねる(フリップ)
✔ 押さないと出ない
✔ ベルティングで破綻する

という現象が起きます。

フリップ(裏返り)は、

「閉鎖不足」ではなく
閉鎖過多によるロックで起きているケースが非常に多いのです。


■ 見落とされている筋肉 ― 後輪状披裂筋(PCA)

ここで重要になるのが、

後輪状披裂筋(Posterior Cricoarytenoid)

です。

この筋肉は

・声門を開く
・披裂軟骨を外転させる
・唯一の声門開大筋

という役割を持ちます。

閉鎖筋群に対して、拮抗的に働く存在です。

しかし実際のボイトレ現場では、

閉鎖筋(TA・LCA など)
伸展筋(CT)

は語られても、

開大筋(PCA)についてはほとんど触れられません。


■ なぜPCAが重要なのか

ミックスやベルティングが成立するためには、

閉じる力 × 伸ばす力 × 開く力

このバランスが必要です。

PCAが適切に関与していると、

・過度な閉鎖が解除される
・声帯の自由度が保たれる
・ブリッジでロックしにくくなる
・高音でも地声成分を残しやすくなる

つまり、

締めないミックスが可能になる

のです。


■ まず確認すべきこと

では、何から始めるべきか。

それは非常にシンプルです。

① 純粋なファルセットが出せるか

・息を混ぜすぎない
・押さない
・閉じにいかない
・細くても良い

この状態で、

裏声を安定して長く保てますか?

これが不安定であれば、

開大側のバランスが崩れている可能性があります。


② ファルセットロングトーン

目的:PCAの関与を取り戻す

方法:

・楽な高さで裏声を出す
・5〜10秒キープ
・喉を締めない
・体幹を固めない

「閉鎖を強める」のではなく、

閉鎖を足しすぎない感覚を覚えることが重要です。


③ ブリッジで“少し開く”

ブリッジ付近(E4〜F4前後)で、地声に後輪状披裂筋の開く感覚と合わせるイメージで行う。

・完全閉鎖を目指さない
・ほんの少し息を許す
・押し上げない

この“少し開く余白”が、

声区融合のきっかけとなり、フリップを防ぎます。


■ 閉鎖と伸展は重要。しかし、それだけでは破綻する。

誤解してほしくないのは、

閉鎖筋や伸展筋を鍛えることは
音域拡張において非常に重要です。

しかし、

それだけでは

ミックスボイスやベルティングは成立しません。

なぜなら、

声は常に

拮抗バランス

で成り立っているからです。


■ 本当に必要なのは「評価」

どの筋を鍛えるかではなく、

どのバランスが崩れているかを見抜くこと。

・閉鎖過多なのか
・伸展不足なのか
・開大抑制なのか
・喉頭固定なのか

これを構造で判断できるようになることが、

ミックス習得の近道です。


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■ 最後に

ミックスボイス習得の練習に声帯の開く視点を持つことなど

必要なのは、

開く力を含めた声のバランス設計です。

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